原因と結果

私は大学で演劇を専攻していたので
感情というものをいつでもからだに再現する訓練を受けました。
これは今では心理セラピーに本当に直結して役立ってくれています。
催眠療法というのは脳の仕組みを利用して
潜在意識に変化をもたらすのですが
脳は、実際に起こったことと鮮明に想像したことの区別がつかない、
という風に言われていて
その特性を利用しています。
演劇では「悲しいから泣くんじゃない、泣くから悲しいんだ」という風に
感情表現について教わるのですが
この二点は繋がっています。
演劇の台本にはセリフとト書きというものがあって
セリフの後に(と言って泣く)などと書かれています。
そのときのシチュエーションやセリフは確かに悲しいかもしれませんが
演技者の生理がその登場人物とは違いますので
その役の人のようになれるとは限りません。
それで、普通に考えると
演技者は一生懸命にその役の気持ちになりきろうとしたり
全然関係ない記憶を思い出して泣こうとする場合もあります。
でもそれはしろうと考えなのです。
だいたい、演技というのは日常とは違って
いろいろなものが凝縮されていますので
生身の人間の生理でたとえ泣けたとしても
その「間」や「質量」「寸法」は創造物上では嘘になってしまいます。
演技者は台本や役について探求し、そのイメージを膨らませたら
泣くときはそれにふさわしいであろう泣き方で泣いてみるのです。
泣けようが泣けまいが、やってみます。
そして一連の流れに違和感(嘘)がなくなるように工夫しながら
何度もやってみていると
あるときそこに命が吹き込まれるように
感情と体と動きと言葉が一致します。
そのとき初めて、役の人物の気持ちが全身でわかります。
そのように泣いてみて、初めてそこで泣く人の内なる感覚がつかめます。
まさに泣くから悲しいのです。
催眠療法でも
子供のときに退行してみて
そのときのシチュエーションと行動を鮮明に思い出して
そのときの気持ちが蘇って感情があふれるということがあります。
子供のときに、受け入れることや理解すること、整理することができないまま
状況や感覚、感情、アクションとリアクション、その出来事への評価などが
絡まって未消化のまま記憶されていることがたくさんあります。
それをしっかりと再体験し
そのときに味わった気持ちや感情を感じきると
記憶の中身が明確になり整理できます。
その記憶がたとえ悲しい感情を伴うとしても
今の理解力を持って再体験することで過去の自分の誤解が解けると
脳は「解決した」という風に認知し
その出来事を卒業することができます。
つまり、過去を赦すとこができるのです。
内側に恐れのような落ち着かない感覚があると
これはなんだろう、その理由はなんだろうと人は考えます。
ですが、この恐れの感覚は人が肉体を持って存在しようとするとき
どうしても起こってきます。
外敵から身を守るための機能だからです。
それからその感覚に見合うストーリーを人間の脳は探すのですが
そのストーリーによってさらにその恐れを裏付けることになり
怒りや悲しみや罪悪感へとストーリーを展開してしまいます。
それで、そんな風に恐れにとられている状況や
原因となっていると思われる環境や周囲の人を疎んだり憎んだりすることになります。
敵がいるから恐れるのではなく
恐れの感覚から、敵(があるというようなストーリー)を作っています。
私たちの考える、原因と結果はまるでさかさまなんですね。
原因を変えれば結果が変わります。
それは、ストーリー(外側にある環境、人)を変えるのではなく
内側にある私たちの恐れそのものとそこから発生しているストーリーに気づくこと
その仕組みを理解して、それを鵜呑みに信じることをやめる
つまりその役を降りること、なんですね。

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